西加奈子の【サラバ(上・下)】感想・レビューあらすじ

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2014年に直木賞を受賞された西加奈子さんの「サラバ」

『自身に内在する社会、一般的な価値観にあった人生』

『自身が本当に好きなもの、楽しいと思うこと、求めていることをすべて持っている人生』

上の二つを両方手にしている、幸せだなぁと日々思っている人ってどのくらいいるのでしょうか。

一体なにを信じて生きていけばよいのだろうか。

そんな悩みに寄り添ってくれる作品。

サラバ

今も何かにつまずいた時になんとなく本棚から取り出して読み返す、大好きな小説「サラバ」。

もう5年以上前に発売されとても話題になった小説です。

心に残っている作品「サラバ」の「感想、レビュー、あらすじ」を書かせていただきます。

上・下巻があり、上も下も300ページ以上ある長い小説ではありますが、西加奈子さんの表現力の面白い文章は、笑える部分も沢山あるので、楽しく読むことが出来ます

主人公の「圷歩(あくつ あゆむ)」の「圷家」についての日常は、笑える部分が多いです。

少し変わった個性の強い家族。

歩だけが、「普通」でいる。そんな、ストーリーです。

オードリーの若林正恭と光浦靖子も読書芸人で紹介していた小説。

最後まで読んでいただければ何か1つでも心に残ることがあるはずです。

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目次

西加奈子の「サラバ(上・下)」感想・レビューあらすじ

イランで生活していた時の主人公とその家族の話から始まり、日本に帰って来てからの主人公の歩が、悩み苦しみ、這い上がっていく、現代社会の誰もが悩む道で、考え、もがいていく姿が鮮明に書かれています

何度も読んでいるので、今はどのページから読み始めても「サラバ」の世界観に入っていける。

本の内容がどんな感じかは、以下に記載します。

Amazonの商品紹介ページに記載されている文を以下に引用させていただきます。

Amazonサイトのサラバ商品ページより引用。

サラバ(上)西加奈子作家生活10周年記念作品

1977年5月、圷歩(あくつ あゆむ)は、イランで生まれた。
父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。
イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。
後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに――。

【サラバ(上)】

サラバ(下)本年度2014年最大の衝撃と感動。

一家離散。親友の意外な行動。恋人の裏切り。自我の完全崩壊。
ひとりの男の人生は、やがて誰も見たことのない急カーブを描いて、地に堕ちていく。
絶望のただ中で、宙吊りにされた男は、衝き動かされるように彼の地へ飛んだ。

西加奈子作家生活10周年記念作品

「サラバ」を読むと、宗教とは何かお金とは何か幸福とは何か?についても考えさせられます。

本当の安定とは何か

以前、メモした「サラバ」で感銘を受けた文章の一部をおこがましいですが、ご紹介します。

サラバ・目次

【サラバ!】もくじ 

目次をまずはまとめてみました。

【サラバ・上】

  • 第一章 狂奇的な姉と、僕の幼少時代
  • 第二章 エジプト、カイロ、ザマレク
  • 第三章 サトラコヲモンサマ誕生

【サラバ・下】

  • 第四章 圷家の、あるいは今橋家の、完全なる崩壊
  • 第五章 残酷な未来
  • 第六章 「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」

「サラバ・上」では、主人公の歩の周りにいる人物の説明が殆どです。「下」から徐々に物語が進んで行きます。

感銘を受けた文章 心の中にある本当のこと

自分のしたいことを貫くこと。

本当の幸せ・裕福とは何か

【男を好きな男子クラスメイト(林)に言い寄られた「すぐ(クラスメイト)」と「歩(主人公)」の会話

歩:気持ち悪ない?

すぐ:気持ち悪くなんてないで

歩:嘘やん

すぐ:ほんまや。なんやったら尊敬してるよ

歩:まじで?なんで?

すぐ:だって、自分のしたい事とか思いに嘘つかずにおるのって難しいやろ。特に林のような人らは。あんなに皆に色々いわれたり、時々どつかれたりしてるやん。それでも自分の意志を曲げへんのは、俺はほんまにすごいと思うねん

歩:じゃあ、林に告白されたらどうするん?

すぐ:断るよ

歩:何て言って?

すぐ:僕は林のことは好きになられへん、って言う。

「すぐ」「歩」の会話は高校生の時にした会話。なんでもない会話の様で深い。

「すぐ」は、ピースの又吉っぽいなーと思って読んでいた。そしたらやっぱりそうだった!

西加奈子のインタビューで「すぐ」のモデルになっているのはピースの又吉言っていた!

エジプシャンの子供・ヤコブと日本人の子供・歩】

ヤコブの家は、エジプシャンの家で裕福な家ではない

歩の家は、日本人の家でかなり裕福な家

歩の家はとても裕福な家なのに・・・

『僕は恥じていた。綺麗なシャンデリアを、磨かれたアップライトピアノを、なのにヤコブの家にある柔らかなものが欠如した空間を。「不穏」を。』

『時々、心から本気でヤコブの家の子供になりたいと思った。その思いが、母を裏切ることになるとわかっていたが、そう思うことは止められなかった。』

【ヤコブと歩の最初の別れ・ヤコブという男の子】

ヤコブが祈っている姿の完璧さに、僕は打ちのめされた。

不思議なことに自然と言葉が浮かんできた。「ヤコブと又会えますように」

ヤコブは目をつむっていても、どうしようもなくヤコブだった。

どんなに裕福な家でも、貧乏な家でも、普通の家でも、子供が求めているものって結局…大人になっても同じなんじゃないかなって思ったりした。

上の、【ヤコブと歩の最初の別れ・ヤコブという男の子】の中で祈っている姿の完璧さに、僕は打ちのめされた」「どうしようもなくヤコブだったというところは、物語に入り込んだ場合にしか理解できないかも知れないけど、何度読み返しても心を打たれる文章です。

感銘を受けた文章 正社員とアルバイト

正社員で働いていることが偉い訳ではない

2021年の現在は『政府が副業を推奨している』。(この記事を書いているのは2021年上旬)

『正社員・契約社員・アルバイト・パート・派遣』という格差?はもっともっと本当の意味で徐々になくなるのではないかな。

「世間的にはフリーターでも僕は毎日楽しかった」

【歩の元彼女(晶アキラ)の言葉】

晶という女性→綺麗、頭が良い、歩を信頼してくれている、優しい、最終的歩を振った晶

「努力して努力して何かを得ようとしている人をバカにしているんじゃないの?就職活動しない、アルバイトが楽しいのはわかる。頑張って就活して、自分のやりたいことじゃなくても、それでも頑張って、社会の一員として頑張って働いている人のことを馬鹿にするのはおかしいよ。」

頑張ってを3回も使った。

「8ヶ月働いて、大変だけど、働くことの大切さに気づいた。アルバイトではなく社員になることで社会に責任を持つってことの意味を。」

【晶の言葉を聞いて歩が思ったこと】

晶のことを嫌いになった。

「同じレベルにいたくない」と思えるほどに、晶は遠い人だった。

別れた。

本当の安定とはいったい何なんだろう。

「正社員」になれば安定なのだろうか

世間体的には正社員は安定

自分の心の中も安定するのであれば、やっぱり正社員でバリバリとフルタイム勤務する。

残業もする。

会社の犬になる。

会社のために頑張って毎日働く。

それでも…心の奥底でみんなが目指しているのは脱サラだったりする

この本の結末というか、歩が最終的にとった行動、歩の心が動いた行動。

『歩は小説を書いた。』

その小説が、『サラバ!』

主人公の悩みは普通じゃない家族、それぞれが信じるもの

僕の家族はおかしい。

そして今や、それが僕の邪魔をしようとしている。

僕は何かにすがりたかっただが、すがりたいものが何なのか、僕には分からなかった。

「父は会うたび、貴子は元気だ、と言ったが、貴子が巻貝になっている、とは言わなかった。決して。」

「父は関東近郊の山寺に籠った。しばらくしてから、僕の通帳に、金が振り込まれていた。悲しくなるくらいの大金だった。」

「どこか張り合っているように見えた母も、ある意味鎧を脱いだ。」

「お金を信じてると、いつか痛い目に遭うんよ。」←あの母が言ったセリフ・・・

姉(貴子)

「姉は飢えていた。小さな頃から、あらゆるものに飢えていた。おばちゃんは、姉のそんな姿を、いつも見ていた。おばちゃんは姉を愛していた。「愛されない」「足らない」と飢えていることを姉が自分のせいにすることはないように。

「【サトラコヲモンサマ】は姉を決定的に傷つけたが、それでももちろん、おばちゃんが姉を見捨てるはずはなかった。おばちゃんは姉も愛していた。」

「良い生活をしている人間の余裕がにじみ出ていた。」

「安定という平らな石の上に、裸足で経っている人のようだった。」

「いつだって、「不穏」「不安定」が分泌されていた。それが周りに感染し、姉はいつも何かの元凶だった。」

「私が私を連れてきた。今まで私が信じてきたものは、私がいたから信じたの。その中にそれはいるの。私が私である限り。」

<貴子が行った海外の一部の国・それぞれの人が信じていること>

ブータン 砂曼荼羅(すなまんだら)」を作っている僧侶をみた。

ルワンダ 木で出来た十字架に祈っている少女をみた。

チベット バター彫刻をみた。精巧、美しい。そして誰が作ったのか分からない。何故ならそれは仏様にあげるものだから。

アイザック(貴子の旦那さん)

バター彫刻をみて号泣している貴子をみて言ったアイザックの言葉

「あなたはこの彫刻を観るためにやってきたんですね」

普通のおばちゃんなのに「世の教祖的存在」になった矢田のおばちゃん

矢田のおばちゃん

普通のおばちゃんなのに、なぜか教祖様になって信じられないくらいお金持ちになったおばちゃん

「あんたは大人になるずうっとまえから、大人にならんとあかんかったもんな。」それを聞いて僕は図らずも泣きそうになった。

「うちに来る人たちが、信じられるものなら、なんでもな、良かったんや。」

「どんな人にも平等に話を聞き、うなずき、いつまでもその人に寄り添っていた。」

「【サトラコヲモンサマの正体】「あの子(飼ってる猫)が伸びをしたら、お尻の穴がブブブって震えるねん。それが可愛くてなぁ。それを見てたらおばちゃん、なんでもどうでもよくなるんよ。」

「あの子(貴子)には、自分で、自分の信じるものをみつけなあかん、って言うたんや。」

表面的な幸せ

「絶対に幸せになる」と言った母は、ちっとも幸せじゃなかった

「幸せにならないでおこう」と思った父は、ずっと幸せだった。

絶対に幸せになろうっていう母の幸せって、新しい好きな男性(世間一般にスペックの高い男性)とお付き合いしてラブラブになるってことなのかな。

父は、すべてから解放され、人目を気にせずに自由に生きている。

ヤコブの言葉

「大切なのは、違う人間が、違うことを認めて、そして、繋がることだ。宗教なんて関係ないんだ。

親友同士の結婚

【「すぐ」と「鴻上」】

「すぐ」と「鴻上」からメールが届いた。

「新しい命を授かりました。」

僕はその時点で、もう泣いていた。声をあげて泣くぼくをアメリカ人が気味悪がり、何人かの人が慰めてくれた。僕は幸せだった。とても幸せだった。

子どもの名前は「歩」にした。

あんなにも卑屈だった歩が、友達の幸せを聞いて大泣きしている瞬間、読み手側としては驚きと感動。

言葉

僕たちが簡単に失ってしまう言葉は、でも、言葉として発した瞬間、何かに命を与える。発した刹那に消えるが、残るのだ。」

かつて引いた線とまた違う場所に線を引きたくなったら迷わず引いた。かつて感じたことと、今感じることは違っても、それが同じ本のうちにある限り、僕らは繋がっていた。過去の僕と、今の僕は、はっきりと繋がっていた。

【最後に】

「サラバ!」好きすぎて、記事を書きながら、読み返すたびにまた読みふけりそうなりました、何度も。

物語の中に入り込める時は幸せです。

小説はある意味現実逃避出来るところが好きです。

最後までお読みいただきありがとうございました(‘◇’)ゞ

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